相続税申告で大切なのは、税務調査を過度に恐れることではなく、亡くなった方の財産、債務、過去の資金移動を漏れなく確認し、申告額の根拠を説明できる資料を残すことです。
税務調査を必ず避けられる方法はありません。しかし、分からない取引や財産を申告前に洗い出し、判断した経緯を記録しておくことで、正確な申告と落ち着いた対応につながります。この記事では、所沢市で相続税申告を準備している方へ、財産確認の全体像をご案内します。
相続税申告で確認する財産の全体像
相続税の計算では、被相続人が所有していた本来の相続財産だけでなく、死亡保険金などのみなし相続財産、相続時精算課税を適用した財産、一定期間内の暦年課税による贈与なども確認します。
一方、被相続人の確実な債務や一定の葬式費用は、要件を満たせば遺産総額から差し引きます。財産だけを探すのではなく、次の順に整理すると全体を把握しやすくなります。
- 相続人と遺言書を確認する
- 財産を種類別に一覧化する
- 債務と葬式費用を整理する
- 過去の贈与と家族間の資金移動を確認する
- 特例の要件と必要書類を確認する
- 資料の数字と申告書の数字を照合する
預貯金・証券・手元現金
被相続人名義の普通預金、定期預金、証券口座だけでなく、長期間利用していない口座、ネット銀行、ネット証券、外貨預金、貸金庫の有無も確認します。死亡日時点の残高だけでなく、既経過利息などが関係することもあります。
死亡前後に多額の引き出しがある場合、出金しただけで直ちに申告漏れになるわけではありません。医療費、生活費、葬式費用、贈与、相続人が保管する現金など、使途と死亡日時点の残額を確認します。領収書や振込記録がない場合も、分かる範囲で日付、金額、使途、保管場所をメモしてください。
家族名義の預貯金・証券
配偶者や子、孫名義の口座だから、必ず相続財産ではないとは限りません。反対に、家族名義の口座がすべて被相続人の財産になるわけでもありません。
誰が資金を出したか、贈与について双方の合意があったか、誰が通帳・印鑑・カードを管理したか、名義人が自由に使用できたかを確認します。口座名義だけで判断せず、実質的な所有者を資料と事実から検討します。
過去の生前贈与
暦年課税による贈与は、贈与税申告が不要だった年110万円以下の贈与でも、一定の対象者と期間に該当すれば相続税へ加算することがあります。相続時精算課税を選択していた場合は、暦年課税とは異なる範囲で贈与財産を確認します。
贈与税申告書、相続時精算課税選択届出書、贈与契約書、通帳の振込記録を集め、贈与者、受贈者、贈与日、財産、価額を一覧化してください。
死亡保険金・死亡退職金など
死亡保険金は受取人の口座へ直接入金されるため、遺産分割の資料だけでは見落とすことがあります。保険証券、支払通知書、実際の保険料負担者を確認します。非課税限度額がある場合でも、財産の確認自体が不要になるわけではありません。
死亡時に保険事故が起きていない家族名義の契約でも、被相続人が保険料を負担していた場合は、生命保険契約に関する権利として確認が必要になることがあります。死亡退職金、弔慰金、未収の給与なども支払先へ確認します。
不動産とその利用状況
固定資産税の課税明細書、登記事項証明書、名寄帳などから土地・建物を確認します。共有持分、私道、未登記建物、他人へ貸している土地や建物も確認対象です。
不動産が財産一覧に入っていても、評価方法が実際の形状や利用状況と合っているかを検討する必要があります。申告漏れと評価の誤りは別の問題ですが、いずれも現地状況、賃貸借契約、地図や測量資料などを根拠として残します。
そのほかに確認したい財産
- 被相続人が他人へ貸していたお金
- 未収の賃料、配当、売却代金、還付金
- 非上場会社の株式や事業用財産
- 貴金属、美術品、自動車など
- 国外の預金、不動産、有価証券
- 暗号資産、電子マネー、換金可能な権利など
国外口座や暗号資産があるだけで、直ちに申告誤りや税務調査の対象になるわけではありません。居住地、国籍、財産の所在地、権利内容、換金性などにより取扱いが異なるため、個別に確認します。
通帳だけで分からない場合の調べ方
- 金融機関や証券会社からの郵便物
- 登録メールアドレスに届いた取引通知
- 所得税の確定申告書と収支内訳
- 固定資産税の課税明細書、名寄帳
- 保険証券、控除証明書、支払通知書
- クレジットカードや電子決済の明細
- 不動産や株式の売買契約書
被相続人の端末やオンライン口座は、相続人であっても自由にアクセスできるとは限りません。利用規約や正規の相続手続に従い、適法に取得できる資料から確認します。
申告書と資料の数字をつなげる
申告前には、残高証明書、通帳、財産評価明細、遺言書や遺産分割協議書、相続人別の取得額、申告書の数字が一致しているか確認します。
判断に迷った財産は、除外して忘れるのではなく、『確認済み』『確認中』『判断保留』に分けます。評価方法や財産へ含めた理由・含めなかった理由を簡潔に記録し、参照した資料もひも付けておくと説明しやすくなります。
税務署からの連絡はすべて実地調査ではない
国税庁は、資料情報などから申告額が過少と想定される事案や、申告義務があるのに無申告と想定される事案などについて実地調査を行っています。一方、書面、電話、来署依頼によって申告内容を確認する『簡易な接触』もあります。
税務署から連絡があったことだけで、直ちに申告誤りや追加納税が確定したわけではありません。連絡内容を落ち着いて確認してください。
税務署から連絡があった場合の対応
- 担当部署、担当者名、連絡先、対象税目、回答期限を記録する
- 申告を依頼した税理士へ連絡内容を共有する
- 申告書の控えと指定された資料を、そのままの状態で整理する
- 分からない点を推測で回答せず、事実と資料を確認する
- 実地調査の場合は、日時、場所、対象期間、必要資料、税理士の立会いを相談する
実地調査では原則として、開始日時・場所、目的、対象税目・期間、対象となる帳簿書類、担当者などが事前通知されます。ただし、法令上、事前通知を行わないことが認められる場合もあります。合理的な事情がある場合は日程変更を申し出られることがありますが、自由に延期できるわけではありません。
税務署を名乗る不審な連絡が疑われる場合は、相手が示した番号だけに頼らず、税務署の公式な連絡先から確認することも検討してください。
申告後に漏れや誤りへ気づいた場合
申告税額が少なかったと分かった場合は、修正申告を検討します。追加税額のほか、状況により延滞税や過少申告加算税などが生じる場合があります。
調査通知の前後や誤りの内容によって加算税の取扱いは異なります。単なる計算違いと、財産の隠蔽・仮装がある場合を同じように扱うことはできません。誤りに気づいたら資料を改変せず、早めに税理士または税務署へ相談してください。
よくあるご質問
相続税申告をすると必ず税務調査がありますか?
必ず行われるわけではありません。個別案件の選定基準や調査の可能性を一律に判断することはできません。
税理士へ依頼すれば調査されませんか?
税理士への依頼によって税務調査がなくなることを保証することはできません。税理士は財産確認、評価、申告書作成、説明資料の整理を支援します。
家族名義の口座はすべて相続財産ですか?
いいえ。資金の出所、贈与の成立、管理・使用状況などを総合して判断します。
死亡直前の出金はすべて相続財産ですか?
出金だけでは決まりません。死亡日時点の残額、使途、保管状況、贈与や費用支払いの事実を確認します。
申告後に財産の漏れを見つけたらどうしますか?
税額への影響を確認し、必要に応じて修正申告などを早めに検討します。
まとめ
相続税の申告漏れを防ぐには、預貯金、不動産、保険などの財産だけでなく、家族名義口座、過去の生前贈与、相続前後の資金移動も確認します。分からない取引は自己判断で除外せず、資料と判断経緯を残してください。
田代直人税理士事務所では、所沢市を中心に、財産確認を含む相続税申告の初回無料相談を承っています。全国からのご相談にも対応しています。財産がすべて判明していない段階でも、お問い合わせフォームまたは電話(050-1809-4005)からご相談ください。
監修:税理士 田代直人/最終確認日:2026年9月12日。税制・手続・公表資料は変更されることがあります。個別の財産と申告手続について最新情報をご確認ください。







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