亡くなる前後に被相続人の口座から預金を引き出していても、その事実だけで直ちに違法、脱税、または全額が手元現金になると決まるわけではありません。
相続税申告では、出金日、出金者、使途、実際に使った金額、死亡時に残っていた現金、保管者を資料から確認します。所沢市で相続税申告を準備する方へ、通帳履歴と領収書から資金の行方を整理する方法をご案内します。
基準になるのは相続開始日現在の財産
相続税の財産確認は、原則として被相続人が亡くなった日現在で行います。預金を引き出しただけで財産価値が消えるわけではありません。死亡時に現金として残り、被相続人に帰属していた場合は、手元現金として確認します。
一方、死亡前に被相続人本人の医療費や生活費などへ実際に支払い、死亡時に残っていなかった金額を、同じ金額の手元現金として計上するものではありません。使途不明額を推測でゼロにせず、支出と残額を資料から確認します。
最初に確認する6項目
- いつ、どの口座から、いくら出金したか
- 誰が出金の手続きをしたか
- 何のために出金したか
- いつ、誰へ、いくら支払ったか
- 死亡日にいくら残っていたか
- 残金を誰が保管し、その後どう精算したか
通帳の出金額だけで結論を出さず、資金の出発点から死亡日、その後の精算までを一つの時系列にします。
引き出したお金を4つに分ける
| 区分 | 確認すること |
|---|---|
| 死亡前に被相続人のために支払った | 医療費、施設費、生活費などの請求書・領収書と支払日 |
| 死亡前に他の人へ移した | 贈与、預り、立替精算などの目的と合意・管理状況 |
| 死亡日に現金で残っていた | 残額、保管場所、保管者、被相続人への帰属 |
| 死亡後に支払った | 相続開始時の預金財産と、債務・葬式費用などの支出を分けて整理 |
どこへ分類できない金額は『使途不明』として残し、追加資料や家族の記録から確認します。
死亡前の引き出し
死亡前の出金では、本人の医療費・介護費・生活費などへ支払ったのか、現金のまま残っていたのか、家族の口座へ移したのかを分けます。
たとえば、葬儀準備のために死亡直前に100万円を引き出し、死亡前に20万円を支払い、死亡日に80万円が残っていた場合は、残った80万円の帰属を確認します。これは整理方法を示す架空例で、実際には支払内容と残額を資料で確認してください。
『死亡前に引き出せば相続財産が減る』というものではありません。預金から現金へ姿を変えただけで死亡日に残っていれば、財産の確認が必要です。
死亡後の引き出し
死亡後に口座から葬儀費用などを支払って残高が減っても、相続税の財産計上は相続開始日現在の預金額を基礎として確認します。認められる債務や葬式費用は別に整理して控除を検討します。
死亡後の口座残高だけを預金財産として計上し、さらに葬式費用を控除すると、財産が二重に少なく計算される可能性があります。相続開始時の預金残高と、死亡後の支出を別々に記録してください。
死亡後の出金が一律に違法となるわけではありません。権限、遺言、他の相続人の同意、使途、金融機関の手続などによって法的な評価が異なります。相続人間で争いがある場合は、税務とは別に弁護士などへ相談します。
葬式費用や未払医療費へ使った場合
死亡時に存在した確実な未払医療費などは、要件を満たせば債務控除の対象になります。また、一定の火葬、埋葬、納骨、通夜などの費用は葬式費用として控除できる場合があります。
引き出した金額の全額が自動的に控除されるわけではありません。香典返し、墓地・墓石、法要などは葬式費用の対象外です。費目と実際の負担者を確認し、財産計上と控除を別々に申告書へ反映します。
家族名義の口座へ移した場合
被相続人の口座から家族名義口座へ移しただけで、直ちに贈与が成立した、または家族の財産になったとは判断できません。
資金の出所、移動の目的、贈与についての合意、口座の管理者、家族が自由に使用できたか、返還する約束があったかなどを確認します。贈与が成立していれば贈与税や相続税への加算を検討し、被相続人が実質的に管理・所有していた場合は名義預金などとして相続財産を検討します。
遺産分割前の預貯金払戻し制度
相続された預貯金は遺産分割の対象です。遺産分割前でも、各共同相続人が一定の範囲で単独払戻しを受けられる制度があります。
裁判所を利用しない制度では、各金融機関について『相続開始時の預貯金額×3分の1×その相続人の法定相続分』で計算した額を基礎とし、同一金融機関ごとに150万円が上限です。これは相続税の非課税枠や追加の相続分ではありません。実際の必要書類や取扱いは金融機関へ確認してください。
家庭裁判所の判断による仮払いの制度もあります。必要性や他の共同相続人への影響などの要件があるため、必ず認められるものではありません。
出金・使途一覧を作る
次の項目を1回の出金・支払いごとに1行ずつ記録します。この表は国税庁の公式様式ではなく、事実を整理するための実務用メモです。
- 日付、金融機関、口座
- 出金額と方法(ATM、窓口、振込など)
- 出金した人
- 目的、支払先、支払日、支払額
- 領収書や請求書の有無
- 死亡日時点の残額
- 現在の保管者
- 立替、預り、贈与などの区分
- 遺産分割での精算状況
後から作成したメモは、作成日を明記し、分からない部分を事実のように補わないでください。
相談時に用意したい資料
- 死亡日前後を含む全口座の通帳・取引履歴
- 相続開始日現在の残高証明書
- ATM明細、払戻請求書、振込記録
- 自宅や貸金庫に保管していた現金のメモ
- 医療費、介護費、施設費、生活費の請求書・領収書
- 葬儀社、火葬、寺院などの請求書・領収書や支払記録
- 家族が立て替えた金額と精算の記録
- 家族名義口座への振込記録
- 贈与契約書、贈与税申告書
- 遺言書、遺産分割協議書、相続人間の受渡し記録
領収書がない場合も、通帳、請求書、日記、カレンダー、家族の記録などから分かる範囲を整理します。資料がすべてそろうまで相談を待つ必要はありません。
よくあるご質問
死亡直前の引き出しは全額が相続財産ですか?
一律には決まりません。死亡前に実際に支払った額、死亡日に残っていた現金、他者への移動や贈与などを資料から確認します。
死亡後に引き出した分は預金として申告しなくてよいですか?
いいえ。相続開始日現在の預金額を基礎として確認し、その後の支出は債務・葬式費用や相続人間の精算として別に整理します。
葬儀に使えば全額を控除できますか?
引出額ではなく、対象となる費目と実際の負担額を確認します。香典返し、墓地・墓石、法要などは葬式費用として控除できません。
家族名義口座へ移した場合は贈与ですか?
移動だけでは決まりません。贈与の合意、管理状況、使途、返還義務などを総合して判断します。
出金の領収書がありません。どうすればよいですか?
通帳や請求書などから、日付、金額、支払先、目的、残額を分かる範囲で整理し、不明点を明示して相談してください。
まとめ
死亡前後の預金引き出しは、出金額だけで相続税の扱いを決められません。死亡日時点で残っていた現金、実際の支出、家族への移動、死亡後の支払いを分けて時系列で整理します。
田代直人税理士事務所では、所沢市を中心に、預金の引き出しや手元現金を含む相続税申告の初回無料相談を承っています。全国からのご相談にも対応しています。通帳と分かる範囲のメモをお手元に、お問い合わせフォームまたは電話(050-1809-4005)からご相談ください。
監修:税理士 田代直人/最終確認日:2026年9月13日。税制・手続・金融機関の取扱いは変更されることがあります。個別の使途、帰属、払戻手続について最新情報をご確認ください。







コメント