相続した財産の多くが不動産で、相続税を納める現金が足りない――そのような場合でも、納付を後回しにせず、まず申告・納付期限と手元資金を確認しましょう。相続税は期限までに金銭で一括納付するのが原則です。ただし、一定の要件を満たす場合には、延納や物納という制度があります。
延納・物納は、希望すれば自動的に認められる分割払いや不動産による支払いではありません。所沢市で相続税申告を準備する方へ、検討する順番を整理します。
最初に確認するのは「税額」と「払える金額」
相続税の申告・納付期限は、原則として相続の開始を知った日(通常は死亡日)の翌日から10か月以内です。申告書を期限内に出しても、納付が遅れると延滞税がかかる場合があります。
まず相続税の概算額、各相続人が取得する財産、預貯金などの手元資金、期限までに現金化できる見込みを分けて整理します。相続税は相続人ごとに納付額と資金状況を確認する必要があります。「遺産全体に現金が少ない」だけで、全員が同じ方法を使えると決まるわけではありません。
納税資金を整理する5つの項目
- 申告・納付期限と、相続人ごとの納付見込額
- 相続人本人の預貯金と、相続で取得する預貯金
- 死亡保険金など、受取時期を確認できる資金
- 不動産や有価証券を売却する予定と、実現時期・費用
- 生活費や事業資金を含めた、納付後に必要な資金
売却予定の不動産があっても、期限までに必ず売れるとは限りません。納税資金を見込むときは、未確定の売却代金と既に使える資金を区別してください。売却による別の税金や費用が生じる可能性もあります。
延納は「年払いで金銭納付する」制度
相続税額が10万円を超え、期限までに金銭で納めることが難しい事情がある場合、その難しい金額を限度として延納を申請できます。許可を受けると年賦、つまり年払いで金銭納付します。延納期間中は利子税が必要です。
原則として、延納税額と利子税に見合う担保の提供が必要です。ただし、延納税額が100万円以下で、かつ延納期間が3年以下の場合は担保が不要とされています。担保の種類や延納期間、利子税の割合は個別の内容によって変わります。
期限内申告の場合、延納申請書と担保提供関係書類は原則として申告・納付期限までに提出します。担保書類をその時点でそろえられない場合の提出期限延長制度もありますが、必要な届出と要件を確認する必要があります。申告後に「お金が足りない」と気づいてからでは間に合わないおそれがあるため、早めに相談してください。
物納は「延納でも難しい場合」の制度
物納は、延納によっても金銭で納めることが難しい場合に、その難しい金額を限度として、一定の相続財産で納付する制度です。金銭納付、延納の検討を飛ばして、自由に不動産を差し出せる制度ではありません。
物納に充てられる財産は、相続税の課税価格の計算の基礎となった国内の相続財産のうち、法律上の種類・順位や管理処分の適否などの条件を満たすものに限られます。例えば不動産でも、権利関係や境界、利用状況などによって、物納に適さないと判断される場合があります。「土地があるから物納できる」とは決められません。
物納申請書と手続関係書類も、原則として納期限または納付すべき日までに提出します。土地を物納候補にする場合は、登記・境界・権利関係などの確認に時間がかかり得るため、早い段階で税理士や税務署へ相談しましょう。
延納と物納の違い
| 方法 | 概要 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 金銭で一括納付 | 期限までに金銭で納める原則的な方法 | 納付に使える資金と期限を確認 |
| 延納 | 許可を受けて年払いで金銭納付 | 金銭納付が困難な金額、担保、利子税、申請期限 |
| 物納 | 延納でも困難な金額を一定の相続財産で納付 | 対象財産の種類・順位・適格性、申請書類と期限 |
延納・物納の可否や金額は、相続人ごとの取得財産、現預金、収入や生活費などを含む資金状況によって判断されます。
「申告だけ先に出せばよい」は危険です
申告と納付にはそれぞれ手続が必要です。申告書を提出しただけで納付が済んだことにはなりません。延納や物納も、申請して審査を受ける制度です。申請せずに自己判断で分割して納めることを、延納と同じものと考えないでください。
既に納期限が過ぎている場合は、申告・納付の状況と手元資金を整理し、税務署または税理士へ早めに相談してください。期限後申告や修正申告などでは、延納申請の期限が通常の期限内申告と異なります。個別に確認が必要です。
相談時に用意したい資料
- 亡くなった日、相続人、遺産分割の状況
- 財産・債務の一覧と相続税の概算額
- 相続人ごとの取得予定財産と預貯金残高
- 死亡保険金の支払通知、受取予定日
- 不動産の固定資産税関係資料、登記情報、売却予定
- 相続人ごとの収入・生活費・借入返済などの概要
- 担保として検討する財産の情報
すべての資料がそろうまで相談を待つ必要はありません。期限、概算税額、不足見込額だけでも、早めに伝えることが大切です。
よくあるご質問
現金が足りなければ必ず延納できますか?
いいえ。税額、金銭納付が困難な金額、担保、申請期限などの要件を満たし、審査を受ける必要があります。
不動産があれば必ず物納できますか?
いいえ。延納でも金銭納付が難しいことに加え、相続財産の種類・順位・管理処分の適否などの条件があります。
延納には利息がかかりますか?
延納期間中には利子税がかかります。割合や期間は個別の状況と適用される基準によって異なります。
申告書を出せば納付は後でもよいですか?
申告と納付は別です。延納・物納の許可などがないまま納付が遅れると、延滞税がかかる場合があります。
まとめ
相続税の納税資金が足りない場合は、期限、相続人ごとの税額、使える現金、資金化の予定を先に整理します。そのうえで、金銭一括納付が難しい部分について延納を、延納でも難しい部分について物納を検討します。どちらも要件と申請期限があるため、期限前に相談することが重要です。
田代直人税理士事務所では、所沢市を中心に相続税申告の初回無料相談を承っています。全国からのご相談にも対応しています。納税資金が心配な場合は、亡くなった日と財産・手元資金の概要を、お問い合わせフォームまたは電話(050-1809-4005)からお知らせください。
監修:税理士 田代直人/最終確認日:2026年9月17日。延納・物納の可否、利子税、必要書類は個別事情と最新の制度により異なります。







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